吉祥寺vs.総本部7対7 1勝1敗5引き分けの激闘ドロー!

2006.9.23 関東地区ビジネスマンクラス支部対抗戦

1st.Hit

「来週、総本部に遊びに行くんですけど、そのときに対抗戦やろうよって挑戦状を置いてこようと思ってて」
「じゃあ俺、仲田さんとやりたい。そんで、今度は倒して勝つ」

全ては、7月某日(土)の稽古後、西荻ハンサム食堂の通称「昭和部屋」(2畳くらいの中3階。ちゃぶ台付き)での、宇佐美・小野の「亮ちゃんズ」の、こんな会話から始まった。
二人とも既にタイ料理を肴にビールを3Lくらい空けていたので、すぐに一緒に呑んでいた吉祥寺道場の血気盛んな中年たちを強引に勧誘し「試合やるぞ!」と一方的に決めたのである。

明けて翌週、総本部ビジネスマンクラス(以下、BC)にお呼ばれした小野が、懇親会の席で上記の話を提案。
こちらはこちらで血の気の多いオジサンぞろいのため、とんとん拍子で話がまとまっていく。日程は9月23日(土・祝)。さらにほとんどの対戦カードが、その場でBC指導者の松原隆一郎先輩主導のもと決められていった。
宇佐美が対戦相手として指名した仲田(弐段、関東地区ビジネスマンクラス優勝歴あり)に至っては、 8月から岐阜に転勤になることが決まっているため一度は辞退したのだが、周囲が試合の話で盛り上がる中
「やっぱり自分、その日はこっちに帰ってきます! 1日くらいなんとかなりますよ」
と言い出す始末。
大将格として人望の厚い仲田の一言で、総本部BC勢の士気も、いやが上にも高まることとなった。

2nd.Hit

「対抗戦をする」ということと、いくつかのカードは決まったのだが、実現までにはいくつかのハードルをクリアしなければならなかった。
まずは選手の確定と、場所の確保である。
以前に何回かワンマッチ大会を開催した池袋・豊島区スポーツセンターが有力候補だったが、その前に松原先輩から東孝塾長に試合開催の許可を得る必要があった。
そこで、話が思わぬ方向へ展開する。
「関東地区全体の支部からも選手を募ってはどうか」というのである。そうなるとだいぶ公式戦に近い規模のものになるため、再度企画段階から詰め直す必要が出てくる。
(このあたりは、松原先輩の努力と顔の広さがすべてを解決しました。
場違いですが、改めて感謝の辞を述べたいところです。ありがとうございました)

試合の開催が確定したのは、9月を目前にした8月終わり頃だった。
吉祥寺道場では、少なくとも延期にはなるだろうと高をくくっていたため、いささかの「寝耳に水」感はあったが、それでも「試合」という言葉は、確かに土曜日のBCに緊張感と活気を与えていった。
吉祥寺道場で「試合」に出る「選手」は特別な存在である。一般でもBCでも、選手はハードなメニューをこなし、吉祥寺道場代表として闘うための準備をしなくてはならない。もちろん、当日は先輩後輩に関わりなく、選手が「主役」。
そんな環境だからこそ「技術で相手を圧倒する」吉祥寺スタイルに、全員がこだわって練習に励んだのである。

3rd.Hit

そして迎えた当日。会場は大道塾総本部道場と決まった。
これは、吉祥寺にとってはあまりいい条件ではない。なぜなら、狭い総本部では、遠い間合いでの攻防よりも、前に詰めて接近戦を挑むファイタータイプのほうが有利に試合を運ぶことができ、ミドルキックや前蹴りを主体とする吉祥寺スタイルでは、よほどの技術力がないと相手を抑えるのは難しいのである。
この予想は、ある程度まで現実となるが、いい意味で覆される結果ともなった。

2分2R 投げあり寝技なし
△荒川直哉(綾瀬/38歳/1級)
ドロー
△相原健一(吉祥寺/31歳/3級)
まずは対抗戦とは別に組まれたこの試合で、吉祥寺勢が出陣。一般の試合にも出場し、2年ほど前には小野とも対戦経験のある荒川に対し、相原はローキックを主体に果敢に攻め込む。
カウンターでパンチをもらい顎が上がる場面もあるが、逆にパンチも当てて逆襲。格上の相手に対して優勢のままタイムアップを迎える。
「効果」2以上の差がない場合は引き分けルールのため、ドローだが、充分に斬り込み隊長的な役割を果たしたと言えるだろう。

3分2R 空道ルール
△志田淳(吉祥寺/27歳/1級)
ドロー
△中野雅史(総本部B/27歳/4級)

ここからがいよいよ対抗戦スタート。
吉祥寺の先鋒は、なんと志田。これは相手の中野の指名によるもので「胸を借りたい」というニュアンスが強かったようだが、身長で10cm以上、体重も10kg以上上回り、柔道2段という下地のある中野は、決してイージーな相手ではなかった。
試合開始と同時に体格差を活かして志田を壁に押し込み、パンチから組み合いと得意パターンで優位に運ぶ。
志田はバック肘打ちなど奇襲も見せるが、どうしても中野の前進を阻むことができずにタイムアップ。結果はドローだが、吉祥寺サイドとしては敗北に等しい結果となった。

1.5分2R 投げあり寝技なし
△中野 明(吉祥寺/33歳/3級)
ドロー
△村上知丈(総本部B/35歳)

次鋒戦に登場したのは「吉祥寺の韓流」こと(クォン・サンウに多少似ている) 中野(明)。課題のスタミナ不足を、いかにごまかして勝つかに注目が集まるところだが、今回の試合で、中野は新たな称号を手にする。
それは「天才」。得意のローを中心に攻める中野は、組んでからなんと首投げ、内股を立て続けに決め、試合の主導権を握る。パンチをもらう場面もあるものの、決め手を許さずにタイムアップ。
ほとんど練習したことのないはずの投げ技を決めた中野、今度は勝ちに等しいドローとなった。
ちなみに試合後の懇親会の席で「内股なんかどこで覚えたんだ」との問いに、「内股って何ですか?」と聞き返していたとか。

1.5分2R 寝技各R1回
△穂苅宗一(吉祥寺/40歳/1級)
ドロー
△畠学(総本部B/32歳/4級)

吉祥寺メンバーの中では、組み技への対応力のある穂苅だが、相手の畠はそれを上回る。
組んで下になり、絞め技を狙われる場面もある穂苅。なかなか自分のペースにできない。畠の拙攻に救われている印象が目立つ。結局、両者ともに決め手なくドローへ。
もっとも、穂苅は育児と仕事の都合で2年ほどのブランクから戻ってきたばかりであることを考えると、健闘を称えるべきかもしれない。

2分2R 寝技各R1回
△中野聡(吉祥寺/44歳/初段)
ドロー
△松並亮治(総本部B/40歳/初段)

練習量では、おそらくこの日出場した全選手の中でダントツのトップであることは疑いようのない中野。相手が今年のBC関東地区軽量級王者であっても、必勝の期待がかかる。しかし試合開始と同時に強烈な右をヒットさせたのは松並。
上背こそないが、体ごとぶつけるように攻撃の手をゆるめない。時間の短い試合では、最初にペースが取れるかが重要。このまま松並ペースになるかと思われたが、中野の首を押さえながらの膝蹴りがクリーンヒットし、形勢は逆転。明らかにダメージのある松並の足が止まる。
2Rでも何度かチャンスを迎えるが、中野も畳み込むことができず、惜しいドローに終わった。

2分2R 寝技各R1回
△崎山和義(吉祥寺/33歳/初段)
ドロー
△伊東大地(総本部B/34歳/初段)

今年のBC関東地区重量級王者、伊東に挑む形になった崎山。サウスポーからのミドル、膝、そして蹴った後には投げられないように足を伊東の帯下に引っ掛けてガード。普段の約束組手どおりの動きを見せる。
しかし伊東も重いパンチと、少ないテイクダウンの機会を活かして持ち味を発揮。拮抗した実力どおりのドローとなる。

2分2R 投げ・寝技なし
○深草宏之(吉祥寺/42歳/6級)
一本勝ち(主審判断)
●酒井浩志(総本部B/49歳/弐段)

10年以上のブランクを経て、吉祥寺に再入門して数ヶ月の深草。対するは体格では圧倒的に劣るが、弐段のキャリアと精神力を誇る酒井。
下馬評ではやはり酒井有利だったが、深草の重いフックが数回に渡り酒井を捉え、試合はやや一方的に。それでも前に出てくる酒井の気持ちの強さはさすがだったが、交流目的の試合であることも踏まえ、1R終了時に主審判断でストップ。
ついに均衡が崩れ、吉祥寺が星ひとつリードすることになった。

2分2R 寝技各R1回
○仲田豊穂(総本部B/49歳/弐段)
優勢勝ち(効果2差)
●宇佐見亮(吉祥寺/46歳/初段

迎えた大将戦。この交流戦の発端でもあるカードが、本日の締めくくりとなる。
両チームともに気合の入る中、試合開始。まず前に出てプレッシャーをかけるのは仲田。しかし、その「起こり」を宇佐美のノーモーションの右ストレート、肘打ちがカウンターで捉える。下がりながらの展開ではあるが、クリーンヒット数は宇佐美が圧倒している。
仲田も重いパンチと組んでからの攻防で盛り返し、大将戦にふさわしい激闘の中、1Rは終了。
2R開始時、セコンドからの指示と声援に、軽く拳で応える宇佐美と、鬼の形相で宇佐美を睨み据える仲田。二人の気持ちと気持ちが真っ向からぶつかっている。
2Rも前に出る仲田、カウンターの宇佐美の展開は変わらず。宇佐美は縦の肘打ちまで繰り出し、仲田の動きが一瞬止まる場面もあるが、惜しくもノーポイント。
逆にマウント状態からの極めと、離れ際の左ストレートで、仲田が逆にポイントを奪う。宇佐美も膝蹴りと肘打ちという、吉祥寺の「お家芸」で挽回を図るが、無念のタイムアップ。
効果2の差があるため、仲田の優勢勝ちとなった。お互いの健闘を称えあう両者。一般の試合でもなかなか見られない好勝負となった。

1勝1敗のドローとなった対抗戦だが、総本部BCを向こうに回しての結果であることを考えると、堂々たるものだろう。技術的にも、普段の稽古の成果を出せていたことが収穫である。
反面、特に狭い場所などでは、体力で押してくる相手をどう捌くか、更に工夫が必要と感じた。 (文中敬称略)